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 通りの向こうでワゴン車が走り去る音を聞いて、ようやく深く息を吐く。段ボールの積みあがった離れの部屋の電気をつけ、頭を整理する。  とんでもない一日だった。水倉に連れまわされた後、チンピラに襲われ、あの男にキスされ  ――。一体、何の厄日だ。  唇には、まだ男の体温が残っている。  力強い腕、甘く苦い香り。おそるおそる、スラックスの下のゆるゆると勃ち上がった性器に手を添えた。  大きく骨ばった長い指を思いだしながら、そっと慰める。とてつもない罪悪感と羞恥心に、これ以上ないほど興奮した。
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