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「どうしたの。口、怪我した?」 「――別に」  食事中、無意識に唇を触っていた。母親に咎められるまで気が付かなかった。 あれから二日。男の柔らかな唇を、貪られるようなあの感触を、ふとした瞬間に思い出す。  乾いていて柔らかな唇。ねっとりと粘膜を擦りあげる舌のざらりとした感触。煙草苦い味。あのキスだけで何度か自慰をしてしまった。あの大きな手で慰められたら、一瞬のうちに果ててしまいそうだ。  やばい。  男に抱きしめられキスされたあの感覚を身体が受け入れ、喜んでいるんだ。
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