プロローグ

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「やめっ」  尻のポケットから財布を抜かれた。  そっちに気を取られていると、もう一人が肩掛け鞄を引っ手繰る。そして二人は示し合わせたように逆方向へ走り去っていく。 「くそ……っ」  ふざけるな、馬鹿にしやがって。でも込みあがってきたのは、言葉ではなく口に溜まった胃液と、血の混じった淡。  運が悪かったんだ。  次の瞬間、鈍い悲鳴が。顔を上げると、歩き去ろうとした男の一人が道に倒れてきた。  今、何があった?  黒のジャケットにデニムの背の高い男が、チンピラの襟元を掴みあげている。
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