プロローグ

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 俺を狙っていたチンピラは悲鳴に近い喚き声をあげた。 「一体何をやっている」  腹に響くドスの利いた声で一蹴し、チンピラの腹に深い一発を叩き込んだ。可哀そうなチンピラはくの字に折れ曲がったまま起き上がらない。  その背中に、男は二発目をお見舞いした。武道の経験者だろうか、無駄のない動きだ。  倒れた男が手にしていた肩掛け鞄を俺の手に返してくれる。 「立てるか」  助けてもらったのか。状況を理解するのに数秒かかった。 「ありがとう、ございます」  差し伸べられた指先に触れた瞬間、ぐっと引き揚げられた。
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