86人が本棚に入れています
本棚に追加
分厚い指、身長は俺より頭一つ分高い。服の上からでも肩から胸にかけて厚みがあるのが分かる。鍛え抜かれた身体だ。黒のジャケットTシャツ、デニム、スニーカー。年齢は三十代。きりっとした眉ときつめの一重の目元に、すっきりとした鼻筋、短めの髪が男らしい精悍な顔立ちを際立たせている。
「盗られたものは?」
「あ、そうだ、財布――」
後ろポケットは空だ。
財布の中には免許証やキャッシュカード、その他、学生証などと現金が三万ほど入っていたはずだ。
「やばいな。どうしよう」
「災難だったな。心当たりは?」
低く耳に心地よい声。
「いえ全然」
「怪我は? 病院行くか」
「いや、病院は……」
最初のコメントを投稿しよう!