プロローグ

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 分厚い指、身長は俺より頭一つ分高い。服の上からでも肩から胸にかけて厚みがあるのが分かる。鍛え抜かれた身体だ。黒のジャケットTシャツ、デニム、スニーカー。年齢は三十代。きりっとした眉ときつめの一重の目元に、すっきりとした鼻筋、短めの髪が男らしい精悍な顔立ちを際立たせている。 「盗られたものは?」 「あ、そうだ、財布――」  後ろポケットは空だ。  財布の中には免許証やキャッシュカード、その他、学生証などと現金が三万ほど入っていたはずだ。 「やばいな。どうしよう」 「災難だったな。心当たりは?」  低く耳に心地よい声。 「いえ全然」 「怪我は? 病院行くか」 「いや、病院は……」
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