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靖国通り沿いワンブロック先のガードレール脇に止められていた国産ワゴン車のドアを開けてもらう。その後部座席に座らされた。
男は上着を脱いで助手席に放り、運転席の窓を開け煙草を一本咥えると、火を点けた。そして車のラジオをつける。
その様子が、父の背と重なった。
いや父の肩のラインはもう少し華奢だったかもしれない。十年も前の記憶はあやふやだ。昭和の香りがするラジオ内容。
「どうした?」
怪訝な顔で尋ねられ、慌てて顔を伏せた。変に思われたかもしれない。ずっと男の横顔を見つめているなんて。
「いえ、別に……」
「ああ、悪い、煙草か」
男は視線の理由が煙草だと勘違いしたらしい。煙草を携帯灰皿に押し当て、火を消す。
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