人革装幀職人《にんぴそうていしょくにん》

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 源平池の休憩所で鯉の餌を買ってもらった少年は,嬉しそうに鯉や亀に餌を投げた。少年の周りには鳩が群れ,少年から餌を貰おうと羽根を拡げてアピールしていた。  私は池の反対側の旗上弁財天社がある小島へと移動し,離れたところから親子の様子を覗った。  どんなに離れた場所からでも楽しそうに鯉に餌を投げる少年の笑顔の美しさに見惚れ,その美しく透き通る肌は観ていて飽きることがなかった。  すぐに餌がなくなってしまったようで,少年は物足りなさそうにしているのが伝わってきた。  母親がいなければ私が餌を買ってあげるのに,と思いながら静かに少年を観ていた。
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