人革装幀職人《にんぴそうていしょくにん》

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 そして親子の声が聴こえた瞬間,まるですべてが静まり返り無音の世界が広がった。  すべてがスローモーションになり,私の手にしっかりと握られた(もり)が母親の首を貫くと,一瞬で絶命した母親の身体を銛が刺さったままの状態で海側の茂みに乱暴に投げ込み,そのまま流れるように身体の向きを変え,少年の身体を抱きかかえたと同時に力任せに首が前後反対になるまで一気に捻った。  ゴキンという軽い音とともに,少年の全身から緊張と恐怖が抜けた。 『よし! うまくいった!』  ほんの一瞬の出来事だった。私はそのまま力のない少年を抱えて走り,すぐ近くにある漁師小屋に運び込んだ。少年を小屋の中に優しく寝かせると,呼吸を整えてすぐに母親の身体の回収に向かった。  途中で私によく懐いている猫がご飯をおねだりに来たが,優しく頭を撫でて「ごめんね。いま,ちょっと急いでるから,また後でね」と言って再び茂みへと向かった。
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