弟が反撃を開始します。

5/5
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「復活」 「おはよう。良かったわ」 「おはようです」 もともと熱があったわけでもないし、腹痛ごときで何日もバテるようなタマじゃない。日頃から鍛えていると、回復力がまるで違う。 「俺ってやっぱり、完璧なんじゃ…」 「文系科目ができればね」 母親の辛辣な一言が、俺に現実を突きつける。 今日は金曜日だけど、気分が上がらないのは確かだった。なぜか、胸のあたりがそわそわするのだ。暗雲が立ち込めているような予感がする。 その原因を探っていると、ベーコンエッグの黄身を周りを箸で丁寧に切り取りながら、今度は姉が現実を突きつけてきた。 「今日、定期考査の範囲発表だからね」 「ぎゃ!そうでした!」 胸のざわめきの正体は、これだった。 「ああ、そう。今回は、点数の下に赤線が引かれるなんてこと、ないわよね?」 そう言って微笑む母は、般若様を背負っているようだ。俺は何も返すことができず、しょぼしょぼと洗面所へと向かう。その後ろをすぐ、乙美がついてくる。 「ヤバいんだったら、英語と現文なら教えられるよ。世界史は自分でどうにかして」 「え?いいの?」 「それこそ、山部くんに頼られでもしたらこっちが迷惑だし。同じ家にいるんだから、そっちの方が効率がいいでしょ」 「お姉ちゃん、好き!」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!