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「復活」
「おはよう。良かったわ」
「おはようです」
もともと熱があったわけでもないし、腹痛ごときで何日もバテるようなタマじゃない。日頃から鍛えていると、回復力がまるで違う。
「俺ってやっぱり、完璧なんじゃ…」
「文系科目ができればね」
母親の辛辣な一言が、俺に現実を突きつける。
今日は金曜日だけど、気分が上がらないのは確かだった。なぜか、胸のあたりがそわそわするのだ。暗雲が立ち込めているような予感がする。
その原因を探っていると、ベーコンエッグの黄身を周りを箸で丁寧に切り取りながら、今度は姉が現実を突きつけてきた。
「今日、定期考査の範囲発表だからね」
「ぎゃ!そうでした!」
胸のざわめきの正体は、これだった。
「ああ、そう。今回は、点数の下に赤線が引かれるなんてこと、ないわよね?」
そう言って微笑む母は、般若様を背負っているようだ。俺は何も返すことができず、しょぼしょぼと洗面所へと向かう。その後ろをすぐ、乙美がついてくる。
「ヤバいんだったら、英語と現文なら教えられるよ。世界史は自分でどうにかして」
「え?いいの?」
「それこそ、山部くんに頼られでもしたらこっちが迷惑だし。同じ家にいるんだから、そっちの方が効率がいいでしょ」
「お姉ちゃん、好き!」
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