0人が本棚に入れています
本棚に追加
唯のショートカットのそこだけ何か特別な領域のような髪の間から、突き出る少し大きな耳がぴくぴくと動いた。
「ううん。行けるんじゃない。行くんだわ」
唯は両手を広げ天上を見上げるみたいにして全身で夜空を見上げ言った。ビルの下では、万華鏡のように様々な街の光が煌めき流れていた。
「いいから、降りろ。あぶねぇえだろ」
純がそんな唯に歩み寄りながら言った。
「初めて出会った時のこと覚えてる?純」
突然唯は上げていた顔を下ろし、純を見た。
「ああ、覚えてるよ。っていうか忘れねぇよ」
唯は腕を後ろで組んで、そのままヘリをゆっくりとスキップするみたいに奥へと歩いていった。純はそれを追いかけるように歩いていく。
「お前は酔っぱらってゴミステーションでごみの上に寝てた。最初なんだこいつって、思った。あんな出会い絶対忘れねぇよ」
「ふふふっ」
「でも、なんて奴なんだって、ものすごい興味が湧いて・・、そして惹かれた」
「ふふふっ」
「なんでお前あんなとこで寝てたんだよ」
「・・・」
唯はヘリを歩きながら、右上に顔を向け何の気なしに星空を眺めていた。ビルの屋上は、なんとも言えない静かな澄んだ風がゆっくりと流れていた。
「違うわ」
唯は突然くるっと一回転すると、純の方に体を向けた。
「ん?」
「違うの」
「何が違うんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!