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「私は私を捨てたの」
「?」
「寝てたんじゃない。私は私というゴミを捨てたのよ」
「何言ってんだよ」
「ふふふっ」
唯は笑いながら、またくるっと体の向きを変えると、そのまままたヘリを大きなボタンのついたミニスカートからのぞく足を真っ直ぐ大きく上げながら大股に、奥に向かって歩き始めた。
「お、おい」
それを純はまた追いかける。
「ほんとに俺が売れて、金持ちになったら、こんなおんぼろの汚いビルから脱出して、ほんとに二人で豪華なマンションのふかふかのダブルベッドかなんかの上でさ・・、お前の欲しいもんはなんでも買ってやるよ。それでさ・・」
純は唯の少し斜め後ろを歩きながら唯に向って夢見心地に話した。
「私はいかないわ」
「なんでだよ」
純は唯を見た。
「私はいかない」
「これから、お前と二人で」
「生きている価値が無いの」
「え?」
「なんで自分が生きてるんだろうって、自分が分からないの」
唯は歩く足を止め、純を振り返った。
「分かる?そういう人間がいるって」
「・・・何言ってんだよ」
「ふふふふっ」
「これから俺たちは・・」
「私は別の世界を生きている」
「何言ってんだよ」
「そう、ずっと感じていた。小さい頃から」
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