ふたりの想い

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「ふーん…そぉなんだ~」 天宮はイタズラするような目で相づちを打つと一度視線を天井に向けた。 その様子を怪訝に見つめていたが、暫くすると考えが纏まったようで、こっちを見てまたもや予想だにしなかった言葉を発した。 「ねぇ、今日放課後つきあってくれない?」 春は一番好きな季節だった。 夏に比べやたら暑くなく、冬に比べたら寒すぎず、薄いTシャツでも過ごしやすい季節だからだ。 Tシャツの薄い生地の隙間にさして冷たくない風が通り過ぎていく、その心地よさを感じながら俺は一人の女子を待っているのだが、未だにそれは現れなかった。 放課後の誰もいない教室に残っていることは不思議な感じだった。 俺にとって学校はどちらかと言うと苦手な場所で、そこにみんなが帰った後も一人でいるというのがなんだか滑稽に思えたのだ。 待つのが退屈だったのでなんとなく目を閉じてみる。 すると、いつもの教室のガヤガヤとした騒音はなく窓を揺らす風の音、教室の木の軋む音等が鮮明に耳に入ってくる。 それはこの世にたった一人きりになってしまったような錯覚に囚われた。 心の何処かでそれはそれでありか?等と考えてみる。 どのくらい目を閉じていたのか分からないが、ふと目を開いてみると藍色の大きな瞳をこちらに向けた女子が椅子の背もたれに両腕を絡めて微笑んでいるのが見えた。 「おわっ! び、ビックリさせんなよ!」 「あははははははは なにその顔~?! マジうけるんだけど~ あははははは♪」 いきなり目の前に現れた女子に心臓が飛び出るかと思った。 天宮アンリは俺の大げさなリアクションに腹を抱えて笑っている。 「お、おまえなぁ…人を待たせてそんなに笑うか! もう帰る!!」 俺はあまりに腹が立ったので天宮アンリを残して先に帰ろうとした。 「あ、ゴメン ゴメン。 余りにも面白くて堪えきれなかったの、本当にゴメンなさい 後でご飯奢るから許して?」 天宮アンリは笑いすぎて出た涙を手で拭い、その手を今度は顔の目の前で合わせ必死に謝ってきた。 大分冷静になったのか、かなり反省している様に窺える。 俺はその様子を見て、ふぅとため息を吐くと「ファミレスのDXハンバーグな!」と天宮アンリに言い放った。
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