賽の河原

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 腕時計を落とすって、有り得るのだろうか。 「これも僕に憑りついた妖怪の所為だと思うんだよ」 「はあ、何でもかんでも妖怪や幽霊にするのはどうかと思いますが、流石に少し可哀想ですね」  可哀想と言いながら彼女はケラケラと笑う。 「そう言えば大空って産まれた時死んでいたんですってね」  唐突に怖い事を言う。  今更驚かない、東海林メアリはそういう奴なのだ。  僕の上司である。 「ええ、そうですね。産まれた時に、少し早い段階で呼吸をしてしまったらしく、羊水を大量に飲み呼吸が出来なかったらしいです。医者の処置が早くて助かりましたが、そうですね。産まれた時に死んでいたと言うより、産まれて直ぐに死んだが生き返ったが正解ですかね」  珍しい事では無い。  それ程、人間が産まれるという事は大変なのだ。 「そんな僕すらも忘れていた事よく知っていますね。家族くらいしか知らないと思いますが、まあメアリは何でも知っているんでしょうね」  これも、今更である。  彼女はどんな事件も解決してしまう天才なのだから。部下の個人情報等在って無い様な物だろう。 「最近少し貴方の事を調べたんですよ。何と言うか、壮絶な人生でしたね。退屈しない人生とでも言っておきましょうか」     
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