1. 誕生

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 はじめての感覚にとても怖くなり、僕は手と足を(つっか)えさせて懸命に踏ん張った。何だか足と足がくっついて、うまく動かせない…僕は必死に抗った。  イヤだ! イヤだ! もう少しここにいたい!  いったんねじりの体操が収まった。壁も僕みたいに疲れたのかな…  でもまたすぐに、動きが始まって、耐えて踏ん張って――その繰り返し。その運動は長い間、続いた。  さすがの僕もヘトヘトだった。壁からくる波の周期も、どんどん不規則に、荒々しくなっていった。  それより何だか、肩とか胸とかに、変な痛さを感じるようになってきた。身体もだるくて、奇妙なポカポカさが僕を包んでいく。  それにつれて手足がうまく動かなくなってきた。  いきなりジャンプしたみたいに袋がきゅっとすぼまって、僕の身体は一気に後ろに押し流された。頑張れる元気がもうないから、もう抵抗はしない。  腰から足の先までが、とても冷たい水に触れた。初めての感覚に身震いしたけれど、もう怖さはなかった。  水の中で、誰かが僕の「両足」をぐいっとつかんだ。今度は押す力に、引っ張る力が加わって、僕はどんどん、袋の出口に向けて、滑っていく。  そこからは早かった。つるん、と音はしなかったけれど、一気に僕はその冷たい世界――これから生きていく海の水の中に、飛び出していった。     
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