37人が本棚に入れています
本棚に追加
はじめての感覚にとても怖くなり、僕は手と足を支えさせて懸命に踏ん張った。何だか足と足がくっついて、うまく動かせない…僕は必死に抗った。
イヤだ! イヤだ! もう少しここにいたい!
いったんねじりの体操が収まった。壁も僕みたいに疲れたのかな…
でもまたすぐに、動きが始まって、耐えて踏ん張って――その繰り返し。その運動は長い間、続いた。
さすがの僕もヘトヘトだった。壁からくる波の周期も、どんどん不規則に、荒々しくなっていった。
それより何だか、肩とか胸とかに、変な痛さを感じるようになってきた。身体もだるくて、奇妙なポカポカさが僕を包んでいく。
それにつれて手足がうまく動かなくなってきた。
いきなりジャンプしたみたいに袋がきゅっとすぼまって、僕の身体は一気に後ろに押し流された。頑張れる元気がもうないから、もう抵抗はしない。
腰から足の先までが、とても冷たい水に触れた。初めての感覚に身震いしたけれど、もう怖さはなかった。
水の中で、誰かが僕の「両足」をぐいっとつかんだ。今度は押す力に、引っ張る力が加わって、僕はどんどん、袋の出口に向けて、滑っていく。
そこからは早かった。つるん、と音はしなかったけれど、一気に僕はその冷たい世界――これから生きていく海の水の中に、飛び出していった。
最初のコメントを投稿しよう!