1. 誕生

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 上の方でパチパチと弾ける音や、甲高い鳴き声がしていた。何だか明るくて楽しい音。  生臭い僕の身体が水に洗われて、きれいになった。遠くの方で誰かが言った。さあ足を動かせ! 泳げ! その声を信じて言うと、僕は最初から泳げるはずだった。けれど水に流されてまもなく、僕の身体は顔を下にして沈んでいった。すぐに大きくて優しいものが支え、持ち上げてくれた。  やがて僕の意識は、音のない世界の下に沈んでいった。
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