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大人たちが滑るように家に返ってきて、お互いに仕事終わりの挨拶を交わしている。
片付けが終わると僕らが泳げる自由時間がやってくる。僕たち子供は待ちきれず、周回のスピードを上げる始めた。やがて人間が青いネットの垣根を取り去ると、僕たちはさっと放射状に散って、それぞれ広い世界に飛び出していった。
「いるいる!」
案の定、ショー終わりのおチビさん達が大挙して、ガラスの前に残っていた。その後ろには大人たちもいる。今日もたくさん楽しめそうだ。
僕たちはプールの大外を並んで周りながら、誰がいちばん最初に行くかを決める、簡単な勝負をしていた。
その結果、僕は運悪くビリになってしまった。まあいいや、今日はあの子たちを飽きさせない、楽しい仕かけを考えたんだから。
まもなく大きな歓声が聞こえてきた。一番手のヤツだ。つかみは上々だね。
ひとりずつガラスの前を一往復。その分の楽しみを終わらせて、友達が周回の輪に戻ってきた。身体にタッチされ、次のひとりが、ガラスの前に出ていった。
今日は何やったんだいって聞こうとしたけれど、最初に戻った友達の様子が変だった。あんなにたくさんのパチパチをもらったのに、得意げな風もせず、不服そうな声で鳴いていた。
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