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待ちぼうけ
いつもと変わりない秋の日だった。
大学の授業もやる事も無い、平和な昼下がりだった。
当然のようにアパートの部屋でのんびりとくつろいでいた。
「なんか面白い事無いかな」
そんな事を考えていた。
自分で探す気は無い。ただ、舞い込んできたら俺はそれに飛びつくだろう。
何となく、頭の中には「待ちぼうけ」という歌が流れていた。
ウサギ、飛んで出てこないかな。
だが、そう言う時に舞い込むのは、決まって面白くない事だ。
面倒な案件が舞い込む道筋は色々あるが、この日はスマートフォンが突然着信を告げた。画面を見ると、大政先輩の文字。ため息の二つや三つは許されるべき面倒である。
大政秀太郎は年上であるという所以外、取り立てて尊敬すべきところの無いノーフューチャーな男だ。
でっぷり太った体に無精ひげ。脂ギッシュなちぢれ髪。
幼き頃は神童ともてはやされたらしいが、今や動くたびに周囲に振動をまき散らすだけの男に成り果てた。無駄に尊大で、言う事だけは大きい。だが、怠け者で、大学もすでに二年留年している。
現在二十四歳。間もなく二十五歳でアラサーに突入するというのに、彼女の一人もいない。いや、友達がほとんどいない。
サークルの先輩じゃなきゃ、付き合いたくない人ナンバーワンだ。
電話の内容は、煙草を買って部屋に来いとのお達し。
なんて代わり映えのしない指示だろうか。
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