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大政先輩の部屋のドアをノックすると、入れ、といかにも偉そうな声が返ってきた。
「タバコ買ってきま……した?」
ドアを開けた瞬間見た衝撃の光景。
なんでも過ぎたるは及ばざるがごとし。目の前にあった光景はいささか常軌を逸していた。
感覚がそれを受け取る事を拒否してマヒ状態になったらしい。
我ながら、あまりにも普通に部屋に入ってタバコを渡した。
「はい、どうぞ」
「おー、ご苦労。金は後で払う」
「んな事言って、どうせ払わないくせに」
「俺をチンケなコソ泥扱いするんじゃない馬鹿者が」
実際コソ泥よりチンケだとは思う。
「そうやって、先輩に反抗的だと、いずれはあの公園にいるホームレスみたいになるんだぞ」
「え、あそこにいるホームレス見たことあるんですか?」
「なんだ、お前ないのか。いっつもぶつぶつ言ってて気持ち悪いんだよ。時々俺の事見て笑うし」
それは見てくれが面白いからでは、と言おうとしてやめた。
「見た事無いっスわ。そんなに大きな公園でもないんですけどねぇ」
「公園に油撒いて火を付けたら、飛び出して来るんじゃないか」
無茶苦茶な事を言う。
と、ここでようやく思考が正常に戻った。
「何やってんすか?」
タイミングを外した感は満載だが、俺が尋ねるのも無理はないと思う。
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