いい夫婦の日。

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 これはとある若かりし日の二人のお話。  家の前の街路樹がカラフルだったのはほんの数日前のこと。  うって変わった寒さの中で、木は一息に冬ごもりの準備を始めたらしい。からっからの枝ばかりになった姿を窓から眺めながら、禄朗は傍らで眠る恋人の健やかな寝息を聞いて口元を上げた。  ちょうど試験が終わった後の休息という名目でしばらく部屋にこもりきりで、数日間むさぼりあってしまった。それこそ朝も夜もないくらいに。  半ば気を失うように眠りについた瑞生は、静かに、清廉な表情で瞳を閉じている。ほんの数時間前までのあの乱れた色っぽさは嘘だったように清らかな寝顔。 「瑞生ー」と名前を呼んでも身じろぎ一つしない。  確かにやりすぎたかもなあ、とここ数日の自分の獣っぷりを思い出して、再び下腹部がずしりと重みを増した。  ひとよりちょっとだけ、性に対しては早熟だったし、楽しんできたとは思う。  だけど瑞生とのそれは、「セックス」と簡単に言い表せないような深く濃い繋がりを与えてくれるように思える。  身体だけじゃなく、魂そのものが結びつきこれ以上の幸せはないというような。 「結婚してーなー」  思わず出た呟きに自分でも驚く。
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