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男しか愛せないとわかった時からそんな普通の幸せなんか期待していなかったというのに。もしかして、心の奥底では求めてたのか?
「瑞生、結婚しよ」
いまだ夢の中にいる恋人に囁いても禄朗の声は届かない。
ふいに瑞生がふにゃりと小さく笑った。まるで子猫のような無邪気さで。
「……」
だけど起きたわけではないらしい。しばらくふにゃふにゃと何かを呟いて、再び静かになる。
「なんだ寝言かよ」
むにっと鼻をつまんだら、眉間にしわを寄せ顔をそむけた。
「ふはっ、ブサイクだなあ」
そんなところも全部ひっくるめて大好きだ。愛おしいってこういうことかと毎日嫌というほど胸に迫るものがある。
いつか、きっと。と禄朗は願った。
いつか夢をかなえるその時には、隣で瑞生に笑っていてほしい。だけど、今はまだ。
カレンダーを見ると11月22日。いい夫婦の日。
「いつか瑞生といい夫婦になりてーな」
何十年も経って、お互い歳を取ってしわくちゃのじじいになっても一緒にいて。いままでありがとう、とかいって、お礼の温泉に連れて行ったりして。
禄朗の進みたい未来は、きっと苦労を掛ける道のりになるだろう。だけど瑞生ならついてきてくれる、そう信じている。
「早く起きろよー」
直接好きだって伝えたい。抱きしめて、キスをして、最大の愛を伝えたいから。夫婦じゃなくたって。
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