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ヒカルとケンジ
「お前よくあんな美人に告白する勇気あったよな」
窓際に座る彼女を見ているだけで、幸福感が体中から湧き出してくるようだった。ただそれだけで神様にだって勝てる気がしてくる。戦う理由は全くないんだけれど。
「おい、話聞いてんのかよ」
「彼女の美しさに比べたら、俺の勇気があったかどうかなんかなんて、どうでもいいね」
「病気にでもなったのかよ」
「あぁ、まさに恋の病だよなあ。昔の人はいいこと言ったよ」
「普通に気持ち悪いぜ」
「あぁそうだケンジ、待ってくれって言われたんだけど、何のことだと思う?」
「はあ?誰にだよ」
俺はケンジに事のあらましを説明した。
あれは告白したときまで時間をさかのぼる。
「ミサキさん!あなたを一目見たときから好きでした!付き合ってください!」
「……わかりました。でも少し待っていてください」
夕日のさす学校の屋上で、決死の告白をした。彼女の瞳や髪がキラキラ輝いていたことをいまでも目に焼き付いている。
俺は彼女の言葉通り屋上でずっと待っていた。夕日が沈み星々が
輝き朝日が昇るまで。が気が付くと寝てしまっていて学校が始まる時間になっていた。その次の日は見事に風邪をひいてしまっていた。
「というわけさ!」
「時々入るお前のモノローグは聞きたくなかったけどな。待たせたあの子もそうだが、待ってたお前もお前だな」
「そして次は学校の帰りの時の話だ!」
「話聞けよ……」
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