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旦那がまた何やらごそごそと、ギターをもちだしてきてガシャガシャ弾いている。元バンドマンで若い時はギタリストとして飯を食っていたらしいが、手を怪我をしてそれきり、ギターをやめて音楽業界から足を洗い、あれやこれやで生計を立てている。私が知り合った時はもう普通のおじさんで、頭も薄くなりつつあったが、コロコロとよく笑う気の良さそうな性格が気に入って結婚した。 家にCDとLPは数え切れないぐらいあるが、私も音楽は嫌いじゃないので、旦那のコレクションを勝手に借りて聞いていたりする。 何か忘れ形見のようにリビングにギターが一本置いてあったが、弾いているところは見たことがなく、オブジェなんだと思っていた。 10年以上一緒にいるが、突然ギターの弦を張り替えはじめた。 「どうしたん、弦」 「うん、ちょっと、錆びてきたかなって思って、新しい弦に張り替えてるんだ」 「触ってもないのに錆びてないんちゃう。それに別に弾けへんのやったら錆びててもええやん」 「そうだね。でも錆びた弦やったらこの子がすねるから」 「なんぼしたん弦?高いのちゃうん」 「そんな高くないよ。そんないい弦じゃないから」 「まーちゃん、ピックもこうてるやん。何するつもり。またギターひくん。怪我してやめたんちゃうの」 「いや、あんまり触りたくないんだけどさ、なんか気になっちゃって、この子が寂しがってるような気がしてさ」 「弾けへんのに、無駄なお金使って。なんなんもう。小遣いやからって、無駄遣いしたらあかんで」 「わかってる。弦変えたら終わり」 そう言って旦那は弦を張り替え、軽くチューニングしてギターを置いた。 朝方リビングの方からガシャガシャ音がしたので、部屋に入ると旦那がギターを弾いていた。
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