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入り口からすぐのカウンター席に座っていた僕を見つけた彼女から話しかけてきた。
「あ…ツキ先輩」
「あ…マルちゃん」
吹奏楽部での彼女のあだ名は『マルちゃん』だった。
髪型がおかっぱのようなショートボブだったし
可愛らしかったからなのだろう。
「来年も指揮するんですね」
と笑顔で書いていた楽譜を覗き込みながら
「隣いいですか?」
とまた微笑む。
彼女の笑顔は左の頬に小さく『笑窪』ができる。それが可愛さを一層引き立てるのだ。
「いいよ」
とカウンター席の隣の席に置いていた
塾の道具や楽譜を反対側に移した。
「マルちゃんはどこの短大やったっけ?」
「福岡女子です。来週から学校始まるんですよね。あ…マスター、私もブレンドで」
と席に座りなおすような仕草を見せる。
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