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  「田頭アカネといいます。いつも頂いているお薬をください」  と白い顔を近づけ辞儀をする。夏目が気にいったらしく、上目使いで目をしばたたかせている。  夏目は頷いて店に入り、薬棚の七宝色の引き出しを開けて処方の用意をした。  店主が普段そうするように、相手に尋ねる。 「ご体調は如何ですか?」  するとアカネは頬を染め、妙に笑みをギラつかせて応えた。 「相変わらず、職場でのストレスのせいで、いろいろ大変なの」 「ストレス?」  と訊くと、もじもじと俯いたが、やがて頬を赤らめながら告げた。 「実は、あたし、職場にいるおなじ課の先輩がすごく好きなんです。お互い独身だし絶対に一緒になりたいの」 「……はあ」 「でもその人ににちょっかいをかけるパートの女がいるんですよ。主婦なんだけどあたしより2つ年下で、妊娠中。先輩のほうもいちいち丁寧に相手をするから、苛々するの」    
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