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「……」   ゆるく巻かれた髪の毛先に、この女の孤独を感じた。  なぜそんなことを自分に打ち明けるのだろう、と夏目は少々面食らい、訊いた。 「どうして僕にそんな話を?」  すると、アカネは言った。 「最初に薬の処方について店主さんと話しあった時に、ストレスについていろいろ聞かれたの。それで、そういうことも話したの。だから、きっとあなたも聞いてくれるものだとおもって……」 「なるほど」  夏目はぎこちなく頷いた。  おそらくあの親切すぎる店主は、いやいやながらも事細かく状況を聞いてやっていたのだろう。  しかし夏目は妙なところで誠実だったから、全く関心がないのをハッキリあらわにしてしまう。彼女がくちを開いたタイミングで、すみません、と頭を下げ、調合室へ入る。そして、いつもどの客にもそうしているように、クマザサ茶の入った湯飲みを機械的に淹れ、アカネのもとに持っていき、彼女が金を支払うのを待った。  しかし、彼女はすぐには財布には触れず、ほんのりと顔をほころばせて、ゆっくりと黒の客用ソファに座った。  ふっと鼻から息を吐いて茶を啜り、しばらく夏目のいろいろな部位を計るように見ていた。  が、やがて―― 「ふう」  と、薄笑いをはじかせ言った。
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