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そしてそのままホイールの流線形をすうと夕暮れに溶かし、近づいていった。
いつもの場所に車を停めると、何かが額に触れた。
煙が掠めるような感触だ。
心中屋敷のほうをそっと凝視する、黒いガラス窓が開いている。
もっと目をこらす。
家の中は樹木が自生し、森のようにみずみずしい。というかその界隈で、そこが最もも”森”らしかった。植物の侵食を免れた乾いた土壁には五寸釘がささり、不格好な紙が貼りつけられていた。
名が記されている。
”田頭アカネ”
「……」
夏目は静かにアクセルを踏んだ。眉を顰める。
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