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   夏目はエンジンを切って車から降り、教会のような平たい建物に入った。  小さな劇場に客はまだそれほど居なかったが、ちらほらと劇団員や関係者たちが立っていた。真ん中のほうで誰かがゲネプロのビデオを撮っている。ふっと照明が落ち、袖のほうからレモン色の光の粒がわいた。観客席の一番前に座っている女が、妙に目を引いた。 「心中事件のあった屋敷に居た、あの女だ」  夏目はじっと眺めた。  
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