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街灯から、ただのありふれた白い光がちらついている。その下を、カミキリムシがゆっくり、かさ、つう、かさ、と這っている。
夏目は虫に頼むことにした。虫ならなんでもいいのだが、数ヶ月くらい前からちょっとした願いを頼むと、小さいものなら叶えてくれるようになったからだ。
「虫よ、たのむ。彼女を救ってくれ」
と頼み、涙を垂らした。長身で細身の胴体を傾け、ハンドルに端整な白っぽい顔をうずめた。
この前のある日、通りかかったカミキリムシに頼んだら青信号を七秒間長くしてくれたし、ボンネットの錆び穴が十七個も減っていた。じぶんにとって、虫というものは、願いを叶えてくれる存在なのだ、と夏目はまた顔をあげた。
心中屋敷を眺める目がビー玉のようにカチカチと潤んだ。
なぜ、こんな古い屋敷の前で、縁もゆかりもない人たちの事件にとらわれているのか。
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