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そんな風に無茶をして車道を横切ろうとする女を、しゃにむに取っつかまえて訊いた。
「それ」
刺さったナイフを指さす。
すると、
「これ?」
と、うすく頬笑む。
夏目の瞳をまたじわじわ眺めるようにしたので、すべて知られているような感覚を覚える。通じあった、とすら信じて痺れる。
しかし、女のほうは途端その目をひんやりとさせる。通わせられそうで、通わせられない。それは駆け引きなどではない。もともと死んでいるからだ。根っこの性情が生者と異なり、”白い”のだ。
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