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「もう、うちの薬屋に来ないでください。あなたを見ていると、僕は哀しくなる」
するとアカネはぐっと息を詰めた。
「でも、あのお店はあなたのものじゃないわ。店主さんの──」
「店のおやじがどう云おうと関係ない。あなたは、もう来てはいけない。これは僕の頼みです」
アカネは眼を赤らめてついと逸らし、顔色を黒く縮ませ、俯いた。
その表情に不似合いな、ふわりとしたスカートを翻しながら、とぼとぼとアパート群の影のなかを歩いて消える。
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