53/193

53人が本棚に入れています
本棚に追加
/193ページ
   夏目は頭を撃ち抜かれたように感じた。ハンドルを握る五本の指先が冷たくなっていた。  彼女は幽霊だとすっかりわかっていたが、遮蔽物を透過してゆくさまをまのあたりにすると、やはり愕かずには居られないのだった。  恐怖を感じ、どうじに、奇妙なものも感じた。  透きとおった寂しさだった。  彼女があんな屋敷に帰ってしまったことが、ただただ苦しいのだ。  深入りしてゆくことが止められない。自分は一体どうなってしまうのか。  
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加