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虚ろにあたりを見渡す。森林と化した廃校の雑木林や無人の匂いがする傾いた民家の軒たち、信号灯、棄てられた自転車、アスファルトの道路、そして街灯。
間違いなく、周囲は現実そのものの物体たちにまみれている。それなのに、それ以外の、あってはならない破片が、自分のまわりにハッキリと散りばめられたのだ。
相手への恐怖と、自分の胸のなかに押しこめたいという勁烈な想いが夏目を軋ませる。
逃げたくて、かつ、ただひたすらに向かいたい。
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