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虫に宛てた葉書の返事が来ていたのだ。細い、針金のような文字だった。
『了解したよ。その子が生きのびて、膝を曲げながらテレビなどを観ているようにするから、安心しなさい』
と書かれている。
夏目は驚愕した。顔じゅう緋色にして何度も読んだ。
誰がいったいこれを?
がらんとした六畳間に訊いたが、無論返事はない。腰高窓を開けて雑草まみれの庭を見渡した。カミキリムシやそのほか目立った虫は、何処にも居ない。
「……」
ふるい薬箱に葉書を入れ、しばらく考えた。
しかし差出人の正体など、夏目には知りようもない。
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