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「……前なんて向いてやらないし、アンタのことだって忘れてやんない。光稀の言うことなんて聞きたくないから、告白だってしてやる」
「おー、随分偉そうなこと言うじゃん」
「この世界が消えたら、もうアンタと会えないからね。また私は、一人の世界に戻るんだよ。だからその前に、アンタに言いたいこと全部ぶちまけてやる」
遠くから、世界が少しずつ光の粒子となって溶けていくのが見える。あの本が起こした奇跡が、無情にももう終わろうとしているのだ。だったらせめて、最後まで足掻いてやる。光稀から気持ちを聞きたいのが本音だけれど、せめて私の思いだけは。
「よく聞け光稀!私はアンタのこと世界一愛してるから!アンタみたいな不真面目野郎、私ぐらいしか愛せないんだからね!」
鼻を啜りながら、精一杯の笑顔を光稀に見せる。彼は驚いたように目を見開いていた。
「何年経ったって、光稀のこと忘れてやんないから!死ぬまで思い続けてやる!」
「……はいはい、俺は幸せ者だな」
「絶対思ってないでしょ!」
「さぁ、どうかな」
別段照れた様子もなく、彼は平然と答えて微笑する。最後くらいその余裕さをぶち壊せると思ったけれど、どうやら無理らしい。
「……最期の最期まで、アンタは何も言ってくれないんだね」
「柄じゃねぇからな。ま、お前が現実世界に帰れるように何も言わないでおいてやるよ」
「……生意気」
「不真面目野郎だからな」
得意顔でそう告げて、光稀は私の頭を撫でた。
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