3人が本棚に入れています
本棚に追加
思えば、単なる偶然ではなかったのかもしれない。
一年前に亡くなった彼との思い出の場所。私たちが出会った学校の図書室。生徒のほとんどが下校した放課後。そして、見慣れた純文学の本棚の前に立つ私。
全てが、彼と出会ったあの日と同じだった。
今日で彼が亡くなって一年が経つ。
一年前――高校二年の冬のこと。彼が事故により突然この世を去った。
周囲からひやかされるくらい、私たちは仲が良かったと思う。実際、付き合う手前までいっていたし。だから、彼の死が告げられた時は、人目も気にせずみっともないくらい泣き叫んだのだ。それも今や、遠い昔みたいに感じるようになってしまったのだけれど。
そのせいなのか、私は彼の存在を遠いものにしたくなくて、何かに導かれるようにこの図書室にやってきた。サボり魔の図書委員は案の定部屋におらず、冬休み目前のこの図書室に他に人がいるわけもなかった。
鞄をその辺の机の上に放って、広い図書室内のある場所に私の足は向かう。それが、純文学の本ばかりが並ぶ棚だ。二人して、似合わないなって笑い合ったのをまだ憶えている。
本を読む気分ではなかったけれど、こうすることでなんだか彼に会えそうな気がした。あるいは、ただ感傷に浸りたかっただけなのかもしれない。ぼんやりとした意識のまま、私は並ぶ本の背表紙に指を滑らせた。
「……あれ」
その時、背表紙に何も書かれていない一冊の本を見つけた。小ぶりで、少しだけ傷んでいるようにも見える。本と言うよりは、手帳みたいだ。別にそれに魅力を感じたわけじゃない。だけど私は、気がついたらその本を手に取っていた。
最初のコメントを投稿しよう!