遺愛のダイアリー

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「……い、……おい、伊鞠(いまり)!」  誰かの声で目を覚ました。急激に覚醒した私は、勢いよく目を開く。 「なにボーッとしてんだ」 「え……、光稀(みつき)……?」  焦点の合い始めた視界の中に居たのは、淡い金髪の目つきの悪い少年だった。切れ長のその瞳には、見覚えがある。少し棘のある喋り方も、どこか落ち着く声も、紛れもなく一年前に亡くなった光稀のものだった。 「あ?なんだよ、幽霊でも見たような顔しやがって」 「ほんとに、光稀……?」 「しつけぇな。頭でも打ったのかこのアホ女」 「はぁ!?誰がアホだこのクソ光稀!」 「あー、やっぱいつも通りだわなんでもねぇ」  光稀は心底面倒くさそうに呟いた。  私は目を疑った。試しに目を擦ってみるが、目の前の景色は変わらないし光稀も居なくならない。普段よりも静かな私の様子を不審に思っているのか、光稀はチラチラと私を見ていた。  彼の背後には、豪勢なイルミネーションが瞬いていた。もう日が暮れかけた世界に、それは一層輝きを増していく。私たちはそんな世界の中にあるベンチに二人で腰掛けていた。目の前にある大きなクリスマスツリーは、このイルミネーションの一番の見所だ。    ……あぁ、そうだ。思い出した。  これは光稀が亡くなる一週間前と全く同じなんだ。まだ付き合ってもいないのに、デートという名目で二人で出かけた日だ。 「えっと……、それで、なんだっけ?」
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