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「お前ホント話聞いてねぇのな。何か飲むか?って聞いたんだよ」
「……あー、そうだった」
全く記憶にないけれど、とりあえずそう返しておく。でも、あの時そんな会話をしたかもしれない。この大きなクリスマスツリーの前のベンチで二人で座って、別段面白味もない会話をしたのかも。
「で、何にするんだよ」
「ミルクティーがいい」
「おっけー。買ってくるわ」
私が答えると、光稀はのそりと立ち上がった。たったそれだけの動作なのに、私はひどく動揺して思わず彼の腕を掴んだ。
「ちょっと待って……!」
今この手を離したら、光稀がどこか遠くへ行ってしまうような気がした。それこそ、二度と会えないような遠い場所へ。
「……なんだよ、お前本当に大丈夫か?」
「……」
「体調悪いのか?熱は……ねぇよな。まぁ、お前馬鹿だし」
「ちょっとどういう意味だよそれ」
ひやりとした手が額に当てられる。予想以上の冷たさに、私は身を震わせた。一瞬だけ、冷たくなった彼を思い出して寒気がした。
「……なんとなく、今は飲み物より普通に話がしたい」
「さっき今すぐ温かいもの飲まないと凍え死ぬとか言ってたくせに」
「五秒で忘れて」
「はいはい」
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