遺愛のダイアリー

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 今までにないくらい、私は真剣な顔をしていると思う。頬の筋肉が妙に緊張しているもの。ちゃんと真面目な顔が出来ているのか、光稀も珍しく静かに私を見つめ返した。  上手く言えるかどうかは分からない。でも、これを言えば彼からも同じ言葉を聞けるような気がする。私たちの関係は、かなり上手くいっていたと思うから。正直、フラれるビジョンなんて見えなかった。これで思いを口にすれば、何かが変わるかもしれない。それこそ、彼が死ぬ未来が。  ――そうすれば、私はずっと彼との幸せの中に溺れていられる。 「光稀、一回しか言わないからちゃんと聞いてね」  深呼吸をする。真っ白な息が口から零れ、両頬が微かに熱を帯びる。喉が閉まったみたいに少しだけ息が苦しい。  あぁ、告白ってこんなにも緊張するものなのか。 「私さ、光稀のことがね――」 「ストップ」 「……え?」  好き。  その二文字を口にするよりも前に、光稀に手で口を塞がれた。今までにない静かで落ち着いた瞳が私を映し出す。その奥には、少しだけからかうような、けれど悲しいような、そんな複雑な色が混じっているような気がした。 「お前、ちゃんと“注意書き”読んだか?」  彼は目を細めながら言った。 「……は?なんで、それ……」  私は目を丸くする。私はあの本の最初のページに書かれていたことをそこで思い出した。同時に、何故彼があの本のことを知っているのかが気になった。
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