一章【白い封筒、ジェットコースター、スタートライン】

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「それでは皆さん、今日もお疲れさま!」  仕事仲間に敬礼をして、今日も病院内コンビニの仕事を終えて家への帰路につく。  病院近くの駐車場まで歩き、白とオレンジのツートンカラーの軽自動車に乗る。ラジオからは秋に合う切ない曲の特集を語る、聞き慣れた女性DJ の柔らかい声。  いつもの道をいつものように、少しゆっくりめのスピードで車を走らせる。  二十三で結婚、即離婚してから十年近く続く、変わらない毎日……平穏な一日の終わり。  実家の狭い駐車場に車を停め、空っぽのポストを開けて締め、玄関の鍵を開ける……  何も変わらない、いつもの流れ作業のはずだった。  でも今日は違っていた。  ポストに一通の白い封筒。  少し膨らんだその封筒を手に取る。村橋良香、私宛だ。  珍しいな。さて、送り主は……  ん?はて……誰だっけ……  春原、匠海。  住所は、私の家から多分車で30分くらいだろうか。怪しい勧誘とかではなく、知り合いからの手紙のようだ。  んー?誰だろう……春原……  とりあえずその封筒を口にくわえ、玄関の鍵を開けて家の中に入る。  春原……ハルハラ……ハルハラ……  頭の中で、呪文のように唱えてみる。 
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