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俺達は仲良く3人で歩いているのに、俺の姿はおばちゃんには見えない。
ペンションの内装も4年前と同じで、以前宿泊した時と変わらなかった。部屋は4年前に宿泊した時と、偶然にも同じ部屋だった。
部屋に入ると、里央の顔から緊張が緩み嬉しそうに笑った。
「純、懐かしいね。あの頃と同じだね。見てブルーの壁紙も同じだよ」
里央の隣で渚もハシャイでいる。
犬用のキャリーバッグから飛び出したちくわは、フローリングの床で背伸びをしている。
2人でバルコニーに出ると、湘南の海が一望出来た。
『潮の香りがする!懐かしいなぁ』
「そうね……」
空の青さと、海の碧さ……。
ペンションから眺める海は、まるで1枚の絵画のようだった。
「私……海なんて……。もう2度と見ることはないと思ってた」
『里央……』
「だって……辛すぎるもの……。この海は……私には……辛すぎる」
里央は今にも泣き出しそうだった。
『里央……この海は俺の大好きな海なんだよ。だから……嫌いにならないで欲しい』
「だって……この海は……純の命を……」
『このバルコニーで、俺は里央にプロポーズしたんだ。この場所は、俺にとって悲しい場所じゃない。最高に幸せな場所だったんだ』
「純……忘れていたわ。ここは私が一番幸せだった場所……」
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