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よし!それなら、勇気を出して飛び降りる!プールに飛び込むように、空中にダイブするだけ。
―――エイッ!
雲の隙間から、空中に一気に飛び込む。
水飛沫のように、雲がふわふわと飛び散った。小さな雲を浮き輪代わりに掴む。
掴んだ雲が小さ過ぎたようだ。
『うわわ、ぎゃあー…助けてぇー……』
空中で何度も回転し、次々と雲に激突する。かっこよく地上に降り立つ予定だったのに、顔からズドンと地上に落下し、ワンピースが捲り上がり、下着が丸見えとなり慌てて隠す。
もう死んでいるのだから、痛みは感じないが、ワンピースが捲り上がるなんて、最悪だよ……。
――ていうか……。
ここは何処?
周囲をキョロキョロ見渡す。
地下道に案内標識を見つけた。
――新宿……?
ここは新宿の地下道だ……。
夜の10時を回っているのに、地上界は賑やかだな。沢山の人が地下道を行き交っている。
懐かしいなぁ……。
地下道の片隅に視線を向けると、3人の不良に囲まれ脅されている男子がいた。不良達は金髪にピアス、腰までずらしたパンツ。
脅されている男子は有名私立高校の制服を着用している。塾の帰りなのか、スクールバックを胸に抱えたまま、亀のように首を竦めガクガクと震えている。
私の姿は、人間には見えない。
私の声も、人間には聞こえない。
だから、私が不良に近付いても誰一人気付く者はいない。
どうやら、不良は彼にお金を要求しているようだ。不良が学生相手に公衆の面前で恐喝している。
「僕、お金……持ってないです。2000円しかなくて」
「はぁ?2000円?てめぇふざけてんのか?もっと持ってんだろ」
不良は彼から2000円を奪い、まだお金を要求している。
『ふざけてんのは、あんた達でしょ。弱い者虐めして最低だよ』
「まだ小銭残ってんじゃねぇの。全部出せよ。ほら、跳べ」
彼は仕方なく、兎のようにピョンピョン跳びはねる。ズボンのポケットで、チャラチャラと小銭の擦り合う音がした。
「てめぇ、全部出せっつっただろ!」
「は、はい、すみません、すみません」
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