【1】一目惚れ天使

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 不良は観念したのか、あっさりと警察官に捕まった。 「金なんか取ってねーよ!アイツは化け物だ。金がふわふわ空中を飛んだんだよ!」 「事情聴取は署で聞こう。この界隈で学生ばかりを狙った恐喝が頻繁に起きている。被害届も出てるんだ!静かにしろ!」  どうやら、奴らはこの辺りで恐喝を繰り返す常習犯だったらしい。  不良は警察官に捕まった後も、ビクビクし目を見開き周囲を見渡した。  よぽど私の悪戯が怖かったみたい。 「弘夢(ひろむ)、大丈夫?」 「……う……ん」  彼女の問い掛けに、俯いていた彼が顔を上げた。二重の目、すっと通った鼻筋、形のいい唇、澄んだ瞳。  モデルのような、美形男子だ。 「な、な、見ただろ?お金がフワフワ飛んだんだよ。ゆ、幽霊が地下道にいるんだ……。ひいぃ……」  容姿はカッコイイのに、どうやら彼は超ヘタレらしい。でも私はどちらかといえば俺様男子より、癒し系男子の方が好き。 「はぁ?何言ってんの。弘夢、不良に絡まれてビビッてんじゃないよ」  くりくりとした大きな目、長い睫毛。アイドルみたいに可愛い顔をしているが、彼女は勇ましい。 「本当なんだってば……。お札がフワフワ」 「フワフワしてるのは弘夢でしょう。本当にヘタレなんだから。でもありがとう。私を先に逃がしてくれて、感謝してる」  ――なんだ。  彼女を先に逃がしたんだ。  ヘタレだけど、いいとこあるんだね。  ちょっと見直した。  ますます……好きなタイプ。  ――私は天使でありながら、一瞬で恋に落ちた。  私の心臓は止まったままで、もう鼓動を鳴らすことはないのに、彼のことを考えれると、トクントクンと今にも動き出しそうだ。
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