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不良は観念したのか、あっさりと警察官に捕まった。
「金なんか取ってねーよ!アイツは化け物だ。金がふわふわ空中を飛んだんだよ!」
「事情聴取は署で聞こう。この界隈で学生ばかりを狙った恐喝が頻繁に起きている。被害届も出てるんだ!静かにしろ!」
どうやら、奴らはこの辺りで恐喝を繰り返す常習犯だったらしい。
不良は警察官に捕まった後も、ビクビクし目を見開き周囲を見渡した。
よぽど私の悪戯が怖かったみたい。
「弘夢、大丈夫?」
「……う……ん」
彼女の問い掛けに、俯いていた彼が顔を上げた。二重の目、すっと通った鼻筋、形のいい唇、澄んだ瞳。
モデルのような、美形男子だ。
「な、な、見ただろ?お金がフワフワ飛んだんだよ。ゆ、幽霊が地下道にいるんだ……。ひいぃ……」
容姿はカッコイイのに、どうやら彼は超ヘタレらしい。でも私はどちらかといえば俺様男子より、癒し系男子の方が好き。
「はぁ?何言ってんの。弘夢、不良に絡まれてビビッてんじゃないよ」
くりくりとした大きな目、長い睫毛。アイドルみたいに可愛い顔をしているが、彼女は勇ましい。
「本当なんだってば……。お札がフワフワ」
「フワフワしてるのは弘夢でしょう。本当にヘタレなんだから。でもありがとう。私を先に逃がしてくれて、感謝してる」
――なんだ。
彼女を先に逃がしたんだ。
ヘタレだけど、いいとこあるんだね。
ちょっと見直した。
ますます……好きなタイプ。
――私は天使でありながら、一瞬で恋に落ちた。
私の心臓は止まったままで、もう鼓動を鳴らすことはないのに、彼のことを考えれると、トクントクンと今にも動き出しそうだ。
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