【3】パパ、ユーレイなの?

3/9

114人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
「パパ?おきて……」  状況が理解できず、一生懸命純に話しかける渚を見て、張り詰めていた糸がプツンと切れ涙が溢れた。  ――これは……  現実なんだ……。 「純……純ーー……」  青白い顔……紫色の唇……。  冷たくなった体……。  純に縋り付き、形振り構わず号泣した。 「純ーー……!嘘でしょう!純ーー……!いやあああ……」  純の遺体を取り囲み、SEAサーフィンスクールの社長や社員が泣いている。その場に居合わせた人々の啜り泣きが聞こえた。 「社長である私が強く引き止めていたら……。こんなことにはならなかったのに……」  社長は泣きながら、私に深々と頭を下げた。 「奥さん……。本当に申し訳ありませんでした」  社長は自分を責め、頭を下げたまま号泣している。  サーフィンスクールの仲間達も、みんな泣いていた。  救急車の音が次第に近付く。  救急隊員が到着しても、私は純に縋り付いたまま離れることができなかった。  ――何故……?  どうして……?  プロサーファーとして実力も実績も兼ね備えていた純が、どうしてこんなことになってしまったのか、私には信じられなかった。  目撃していた受講者の証言により、テイクオンしていた純の前方に他のサーファーが前乗りし、純は接触事故を避けるために逆方向にパドルしたが、高波に阻まれ海に落ち海流に流された。  サーフボードのリーシュコードが切れてしまったことも、事故の要因であることがわかった。  救急車に乗り、救急病院に搬送される間……。  夕陽に染まった海が、血を流して泣いているように思えた。  ――もうこの海に……  くることはないだろう。  こんなにも辛く哀しい風景は……  2度と見たくない。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加