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泣き疲れて眠っていると、ふいに……誰かに抱きしめられた気がした。
体が……温かなものに包まれたような、そんな気がした。
誰もいるはずはないのに、誰かに見られているような気がした。
――純……。
あなたに、もう一度逢いたいよ。
――純……。
あなたと、もう一度話がしたいよ。
私は夢の中で……
純に語りかけていた。
眠っているのに、涙が溢れて止まらない……。
◇
――翌日、仕事に行き、店長に日曜日に休暇を貰えないか頼んでみたが、やはり無理だった。
仕方ないよね。日曜日は予約でいっぱいだし猫の手も借りたいくらい忙しいから。
「里央ちゃん日曜日はごめんね。多忙日は極力出て欲しいんだ。里央ちゃんはそのための戦力だから。それより今度飲みに行かない?」
「飲みにですか?……私、子供がいるし、夜はちょっと」
「そうだよね。渚ちゃん誰かに預けられない?里央ちゃんの仕事復帰とスタッフの親睦を兼ねて、歓迎会やりたいんだよね。主役が来ないと歓迎会にならないからさ。考えといてよ。日にちは里央ちゃんに合わせるから」
「そうっすよ!行きましょうよ。たまには里央さんも、息抜きしなきゃ。仕事と子育てだけじゃ疲れも溜まるでしょう」
スタッフの木田渉君も、開店準備をしながらそう声を掛けてくれた。
「大賛成!そうしましょう!」
スタッフの大島幸ちゃんも、笑顔で誘ってくれた。みんなの優しさに、思わず笑みが漏れる。
「そうね。子供のこと知人に相談してみる」
店のスタッフは私含めて5人。
見習いの女子2人を合わせても、合計7人だ。
私が退職した後に入ったスタッフもいるため、仕事をスムーズにするためにも、親睦会に参加することは有意義なことだ。
それに私の歓迎会だと言われたら、尚更欠席できないな。
祐士に渚のことを頼んでみようかな。
祐士なら渚も懐いているし、気心も知れている。
そんなことを考えながらその日の仕事をこなし、渚を保育園に迎えに行き、いつものスーパーマーケットで買い物をして帰宅した。
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