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【純side】
幽霊の俺はやることもなく、まるでストーカーのように里央の周辺を付きまとう。もしもこの姿が里央に見えたなら、『いい加減にして』と嫌がられるだろう。
誰とも話せない寂しさ。
無性に誰かと話したくなるが、幽霊と話せる相手は早々いない。
渚とちくわには、俺の姿も声も聞こえるらしいが、俺が本音で語り合いたいのは……里央……お前なんだ。
里央の働く美容院で時間を潰し帰宅すると、ちくわは嬉しそうに尻尾を振り俺に飛び付く。俺の傍からちくわは離れようとしない。
里央と渚が帰宅し、寂しさから解放される幸せな一時。
家族団欒をぶち壊す祐士が、再び我が家を訪れた。
「ただいま!おちびちゃん、里央」
「祐士、おかえりなさい」
二人の会話が、俺には超ムカついた。
まるで家族の会話だ。俺は祐士を家族だなんて、認めないからな。
「里央、日曜日に休みとれた?」
「ごめん……。やっぱり日曜日は無理だった。多忙日は出勤して欲しいって。月曜日が定休日だから、尚更ね」
「そっか、仕方がないね。俺が今度月曜日に有給休暇とればいいんだよね。そのうち考えてみるよ」
「ありがとう。あのね、お店のみんなが私の歓迎会をしてくれるらしいの。悪いんだけど……、渚を頼めないかな?母には日曜日しか預けられなくて。飲み会はちょっと頼みにくいんだ」
「いいよ。いつ?」
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