【3】パパ、ユーレイなの?

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 俺達を見て祐士が叫んだ。 「ほっ、ほっ、ほらっ。里央、幽霊だってさ!」  人の娘を好奇な眼差しで見るなんて、許せねーな!  マジでむかつく!  怒りにまかせ、畳に転がっていたおもちゃのゴムボールを手に取り、思いっきり祐士に向けて投げた。運動神経抜群の俺、今日もコントロールはバッチリだ。  ゴムボールは直線を描き、見事に祐士の顔面に命中した!ちくわはゴムボールを追い「ワンワン」とハシャイでいる。 「な、なんでぇ?」  祐士が白目を向き、両手を上げバタッと仰向けに倒れた。  まるで潰れた蛙だ。 『ざまーみろ!』  幽霊だって、やれば出来るんだ。  ゴムボールだって、投げれるんだからな。  集中したら、軽い物が掴めるんだ。 「大丈夫?祐士?」  里央が慌てて駆け寄る。  祐士の鼻は真っ赤になっている。 「な、なんでぇ?」 「渚ダメじゃない。人に向けてボールを投げないの!」  渚は里央に叱られ、キョトンとしている。 『ごめんな渚。パパが投げたのに、渚がママに叱られたな』 「いいよ、パパ。なぎさ、へいきだもんね」 渚はニコニコして、俺に抱き付いた。 里央は甲斐甲斐しく祐士の世話を焼き、冷たいおしぼりを差し出す。 「本当に大丈夫?祐士?」 「大丈夫だよ。里央ありがとう」 『たかがゴムボールだろ。大袈裟なんだよ。そんな奴、ほっとけよ!』  思わず怒鳴ったけど、俺の声は里央には聞こえない。  あの2人、お似合いなのかな。  俺はもう里央や渚を守ってやることは出来ないんだ。  渚はまだ3歳、これから成長していくにつれて父親の存在も必要だ。  里央が知らない男と付き合うくらいなら、まだヘタレな祐士の方がマシだけど。  俺が死んで、そんなに月日も経ってないのに。  祐士と家族同然の付き合いするなんて、どうかしてるよ。  3人は仲良く食事を済ませ、祐士は帰り支度をしながら家の中をぐるりと見渡した。 「ねっ、おちびちゃん。パパは今何処にいるの?」 「パパはあそこだよ」  渚は仏壇を指差した。  そこには俺の遺影が置かれている。 「だ、だよな……。だよな……。仏壇だよな」  安心したように小さな溜め息を吐くと、祐士は仏壇に手を合わせ、すごすごと帰った。  俺はその時仏壇の前に寝転がっていたから、渚の言ったことも満更嘘ではない。
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