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里央の目には、指輪がふわふわ飛んでいるようにしか見えないだろう。俺は指輪を里央の掌の上に置いた。
「……嘘でしょう?」
里央は絶句し、指輪を見つめている。
暫く里央は無言で……動かない。
やばいな……。
ショックが大き過ぎたかな?
生きている者にしたら、ホラーだよな。
もしかして、怖がってるのかな?
「純……本当にいるの?」
『ああ……いるよ』
「いるよ、だって」
渚が俺の代わりに答える。
「どうして?ここにいるの?」
『俺にもわかんないよ』
「おれにもわかんないよ、って」
「本当に……ここにいるのね?」
『ああ……』
里央の瞳が潤み、涙が溢れた。
俺を怖がるどころか、里央は両手で顔を覆いぽろぽろと泣き始めた。
「どうして……私には見えないの?渚には見えるのに……どうして……」
『俺にも……わかんないよ』
「おれにもわかんない、だって……」
「逢いたいよ。もう一度……純に逢いたいよ……」
『俺もだ……』
俺は里央を抱きしめた。里央は見えない俺の腕の中で号泣した。渚も「グスングスン」鼻を鳴らしながら、俺に抱きついた。
『渚……ありがとな。大好きだよ』
「なぎさもパパがだいすきだよ」
俺達は時間が経つのも忘れ、寄り添い、抱き合い、渚が眠りにつくまで3人で語り合った。
――この日から、俺と里央と渚の奇妙な同居生活が始まった。
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