【4】俺はここにいるよ。

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 【里央side】  ――私には信じられなかった。  純が亡くなったことを何度説明しても、渚は「パパ……おほしさまじゃないもん。パパ……いるよ」と言う。  嘘でしょう……?  そんなはずはない。  だって純は……  もう亡くなっているんだから。  急に左手があたたかい物に包まれた気がした。 渚が 「パパがママとおててつないだの」って言った。  嘘だよね……?  私は霊の存在なんて信じない。 怪奇現象なんて、現実にあるはずがない。  純はもう……天国に逝ってしまったのだから。  全ては、寂しさからくる渚の作り話。  そう思っていたのだけど……。  ――突然、目の前で純の結婚指輪がふわふわと空中に浮かんだ。そしてそれは……私の掌の上にゆっくりと落ちた。  その現象を見ても、私は信じられなかった。 目の前で起きている不思議な出来事が信じられなかった。  でも、『渚の言ってることは、全部本当なんだ』と思えた。  ――純が、ここにいる……。  私の傍にいる……。  昨日からの奇妙な出来事が、全部純の悪戯だったと理解出来た。  純の姿は目には見えないけれど、純の微かなぬくもりを感じることができ、涙が溢れて止まらなかった。  純が……  天国から舞い戻り、私達に逢いにきてくれたんだ……。  その夜、3人で抱き合って涙がかれるまで泣いた。  純と触れ合えた喜びと、純を亡くした悲しみが 交互に押し寄せ苦しいほどに胸を締め付けた。  ◇  ――翌朝、ベッドで目を覚ました私は、隣に視線を向けた。  いつものように渚が、ぐっすり眠っている。  いつもと違うのは、ベッドには仲良く枕が3つ並んでいること。純の枕だ……。  渚の隣に視線を向けた。  気のせいか、枕が微かに沈んでいるようにも見える。 「ねぇ……純そこにいるの?」  純の枕が 「ポン」と小さな音をたてた。
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