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【里央side】
――私には信じられなかった。
純が亡くなったことを何度説明しても、渚は「パパ……おほしさまじゃないもん。パパ……いるよ」と言う。
嘘でしょう……?
そんなはずはない。
だって純は……
もう亡くなっているんだから。
急に左手があたたかい物に包まれた気がした。
渚が 「パパがママとおててつないだの」って言った。
嘘だよね……?
私は霊の存在なんて信じない。
怪奇現象なんて、現実にあるはずがない。
純はもう……天国に逝ってしまったのだから。
全ては、寂しさからくる渚の作り話。
そう思っていたのだけど……。
――突然、目の前で純の結婚指輪がふわふわと空中に浮かんだ。そしてそれは……私の掌の上にゆっくりと落ちた。
その現象を見ても、私は信じられなかった。
目の前で起きている不思議な出来事が信じられなかった。
でも、『渚の言ってることは、全部本当なんだ』と思えた。
――純が、ここにいる……。
私の傍にいる……。
昨日からの奇妙な出来事が、全部純の悪戯だったと理解出来た。
純の姿は目には見えないけれど、純の微かなぬくもりを感じることができ、涙が溢れて止まらなかった。
純が……
天国から舞い戻り、私達に逢いにきてくれたんだ……。
その夜、3人で抱き合って涙がかれるまで泣いた。
純と触れ合えた喜びと、純を亡くした悲しみが 交互に押し寄せ苦しいほどに胸を締め付けた。
◇
――翌朝、ベッドで目を覚ました私は、隣に視線を向けた。
いつものように渚が、ぐっすり眠っている。
いつもと違うのは、ベッドには仲良く枕が3つ並んでいること。純の枕だ……。
渚の隣に視線を向けた。
気のせいか、枕が微かに沈んでいるようにも見える。
「ねぇ……純そこにいるの?」
純の枕が 「ポン」と小さな音をたてた。
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