【4】俺はここにいるよ。

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「あっ、そこにいるのね?おはよう純」  私には純の姿は見えなかったし、声も聞こえなかったけど、純のことを怖いとは一度も思わなかった。寧ろ、嬉しい気持ちの方が勝った。  姿が見えなくても、せめて声が聞けたなら……。  渚みたいに純と直接話しが出来たなら……。  他人からすれば、奇妙な話かもしれない。  恐怖に怯えてしまうほどの、怪奇現象かもしれない。  でも、私は……  本当に嬉しかったんだ。  私の声に渚が目を覚ました。 「パパ、ママ、おはよう」 「おはよう、渚」 『おはよう、渚』 「ねぇ渚、ママね、渚の言うことは全部本当だと信じてるけど、保育園でパパのことを話しちゃダメだよ」 「どうして?」 「どうしても。これはママと2人だけの秘密ね」 『いや、3人の秘密だろ?』 「パパが、さんにんのひみつだって」 「あっ、そうね。3人の秘密!」  私は渚を見て笑った。  渚もニタッと笑った。  3人で指切りげんまんをする。  純の姿は見えないけれど、幸せな朝だった。  私はいつも通りキッチンに立ち、朝食の支度を始めた。 「純、何がいい?和食?洋食?好きなもの作るよ」 『里央、俺の分は作んなくていいよ。俺は何も食えないんだから、これからは2人分でいいよ』 「パパが、パパのぶんつくんなくていいよ、だって」 「えっ?そうなの?」 「うん。なにもくえないから、だって」 「わかった。今日から作るのやめるね。パパがいるからもう寂しくないし」  2人分の食事は寂しくて、今までずっと純の食事も用意してきたが、結局食べてくれる人がいないことに、寂しさは軽減されるどころか増していた。  でも、今朝は寂しくない。  だって純が傍にいてくれるから。  姿は見えないけど、私にはあなたがわかる。  この世界に戻ってきてくれて、ありがとう。
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