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『じいちゃん、大丈夫かよ? 気は確かか?』
『バカ者! せっかくお前の望みを叶えてやろうと、地上界に降りてきたのに! もうやめて天界に帰ろうかのう……』
『何?じいちゃん、俺の望み叶えてくれんの?それでこの地上界に降りてんの?』
『ああ、そうじゃ。少しは気分が盛り上がって来たかのう?生き返ること以外なら、望みを3つ叶えてやるぞ!』
『3つ……? なんでたった3つなんだよ!ケチケチせずもっと叶えてくれよ』
『バカ者!本当にお前はバカ者じゃのう。望みを3つも叶えてもらえるなんて、滅多にないことなんじゃぞ!お前は生きていた時に、3つの命を助けた。だから3つの望みを叶えてやるんじゃ!』
『3つの……命か?』
『そうじゃよ、もう忘れてしもうたのか?
ひとつ目は、中学生の時じゃ。近所の公園で自動車に引かれそうになった子供を我が身を投じて助けたじゃろう。
ふたつ目は、大学生の時じゃ。近所の火事に遭遇し、火の中に飛び込んで婆さんを助けたじゃろう。
みっつ目は、 湘南の海で、溺れた子供を助けたじゃろう。
お前は見かけに寄らず、まれに見る勇敢な男じゃからなあ……』
『見かけに寄らずは、余計だよな。でも本当に?じいちゃんは神様なのか?』
『まだ、疑っているのか?そんな奴に望みなんか叶える必要はないのう』
『まぁまぁ、そう言わずに!じいちゃんのこと、信じるからさ。生き返る以外なら、何でもいいんだな?』
『ああ、いいぞ!何でも申すがよい』
白髪のじいちゃんは、少し曲がった背中をシャンと伸ばした。
『だったら、俺の声を……。いや……俺の姿を里央に見せたい!』
『そりゃあ、ちょっと難しいのう。お前は幽霊なんじゃ。ずっと見えてるなんて、幽霊らしくないじゃろう。幽霊は謙虚で慎ましくひっそりとするもんじゃ。先ずひとつ目の願いは、妻に声を聞かせ話しができるようにしてやろう!』
『まじで!?でも、じいちゃん、娘や犬には俺が見えてるぞ?仕事先のばあちゃんにも見えてるぞ』
『無垢な子供や動物には、時折見えるんじゃ。ばあちゃんって、もしかして時ちゃんのことか?』
『ああ、じいちゃん知ってんの?』
『時ちゃんは、わしの初恋の人じゃからのう』
自称神様はポッと顔を赤らめた。
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